Q11
電話取材はできれば避けたいものです。最善のコミュニケーションは人と人との対面によるものと言われています。電話ですと、どういうわけかミスが多くなることを私たちは経験で知っています。広報のマニュアル本にも、電話取材は断るべきであると書いてあったります。
しかし、実際にはそれが通用しにくい状況が少なくありません。とくに新型コロナ以降、なかなか対面が難しいケースも増えています。発表した直後など、あちこちの報道機関から「確認」と称して電話の追加取材があります。その度に「電話では話せませんのでご来社ください」というのは無理がありますし、記者が受ける印象もよくありません。
取材後や記者発表の後、プレスリリースした後などに電話がかかってくるのは、そのときまさに原稿を書いているところだと考えてもよいでしょう。いざニュース原稿を書き始めてみると、あれを確認しなくてはとか、聞き忘れたことがあったなと気づくことが多いようです。また、書き上げた原稿をデスクに回すと、この部分を確認しておけとか、ここをもう少しふくらませろと指示を受けることもあります。そんなときは締め切り時間が迫っています。そういう事情に忖度して、できるだけ早く回答してあげてほしいものです。
私の知っている企業では、質問事項だけを聞いて即答せずにメールやFAXで回答していますが、どうしても回答に時間がかかってしまいます。
また、電話にレコーダーを接続している広報担当者も多いと思います。録音は必要悪だと思いますが、後日「言った、言わない」の水掛け論に ならないように備えているわけです。
企業危機などで電話による問い合わせが次から次へとかかってくるような状況下では、FAXやメールで回答しようとすると、かえって手が回らなくなる事態に陥ります。また、文書ではどうしても紋切り型の回答になってしまい、それを画像入りで報道されてしまうリスクもまれではありますが存在します。そのように考えると、電話取材をすべて拒否するのは現実的ではないと考えます。
ところで、「言った、言わない」の水掛け論は、広報担当者と記者の間ではそれほど経験することはないように思います。水掛け論は往々にして、広報担当者と、取材に応じた社内の別セクショ ンあるいは役員などの間でより多く起こるようです。電話につないだ会話レコーダーも誤報対策というより、社内対策や護身術の一つなの かもしれません。