Q2
ニュースリリースの発信は広報業務の基本ですが、取締役会での決定事項や発表案件を発信するばかりでなく、社内の各部門から情報を発掘し、さまざまな話題をニュースリリースとして発信することを最初の第一歩としたらいかがでしょう。そのような活動ができる体制を整えることが当面の目標になります。
会社としての発表案件は正式なルートで伝えられてきますが、それだけでは十分とは言えません。企業の中には日々新しいニュースのネタが発生しています。それらを発表できるコンテンツとしてまとめて発表したり、記者に売り込んだり、取材に応えたりするのが広報の仕事です。
経営層の方々が情報発信に理解があるなら、手持ちの情報を積極的に広報担当者に流してくださるようにお願いしてみましょう。 経営トップの理解が得られれば会社全体の理解が得られ、情報がどんどん集まるようになってきます。しかし、多くは十分な理解が得られない状態から出発することになりますので、そのように仮定して話を始めましょう。
1.クリッピング:
毎朝、新聞記事をチェックして自社や業界の関連 記事をクリッピングし、コピーして経営層や幹部に配布する作業です。他にも要望する部署があったら送ってあげてください。社外へ発信する広報の仕事とは真反対のようですが、単なる経営層へのサービスではなく、リリースや取材というかたちで発信した会社の情報が、どのくらい社会へインパクトを与えたのか、それが会社にどんな影響をもたらすのか、手応えを知るとともに社内の理解を高めることが目的です。
新聞などの媒体に自社の記事が掲載されると、悪い記事は別として、経営層のプライドをくすぐります。それがさらに情報を開示しようという動機となります。ですからクリッピングは広報にとって大切な仕事なのです。
なお、クリッピングは著作権の問題にかかわりますので、事前に(社)日本複写権センターなどに相談されることをお勧めします。
2.社内取材:
社内のいろいろの部署を訪問して、社外に発信することによって会社の業務にプラスになりそうな情報はないか取材します。
社内の人たちは自分にプラスにならない情報は出したがりません。広報の手引き書などを読むと、「会社に不利な情報もどんどん出すべし」などと書いてありますが、初めはそのような理想を追う必要はありません。会社の利益になりそうな情報だけでもせっせと探しましょう。この作業には広報担当者のジャーナリスティックなセンスが要求されますが、経験を積むうちに養われて来ます。
記事や報道が出ることによって、自社の新しい製品やサービスが認知され、ビジネスにプラスに働いたというような実例が出てきます。それらが積み重なれば、社内から情報は自ずと集まって来るようになり、リリースの数は自然に増えて行きます。そうなると、「広報の専任者をおかなければ、とてもやって行けない」ということになるでしょう。
また、兼務している間は発想の転換をして、兼務のメリットを活かして情報集めをすることを考えてみましょう。 営業統括部門にいるなら、新製品や営業関係の情報をそれほど労力をかけずに集めることができるでしょう。
広報担当者にとって最も大切なことは、社内からの信頼です。広報に話すと社外秘がどんどん流出してしまうなどと誤解をされたら情報は全く入って来ません。企業目的と広報活動が合致していることを認められるようになれば、いずれトップから企業秘密に近い情報(将来発表されるだろう情報など)を事前に伝えられて発表の準備を命ぜられるようにもなるでしょう。
社内から十分に情報が集められないときは、広報担当者が情報をつくってしまう、という手もあります。と言ってもウソをでっち上げるわけではありません。実例を挙げると、タバコを吸っている人の何%が1回以上禁煙をしようとしたことがある、といった記事を新聞で見かけることがあるでしょう。 あれは禁煙ガムや禁煙パッチを発売しようとしていた製薬会社が、調査結果を報道機関に発表する目的で調査したものです。 これを「パブ調査」(パブリシティ用の調査)と呼んでいます。このような調査はある程度の予算が必要ですが、工夫次第でやり方はいくらでもあると思います。頭を絞ってそのような工夫を積み重ねてください。