奇跡のリンゴ
2009.03.13
知人より「奇跡のリンゴ」を二ついただきました。抽選でやっとの思いで手に入れたリンゴなのだそうです。
皮の色は少し黒ずんだ感じで、お店でみるような鮮やかさはありませんが、見た目には普通のりんごです。とにかく食べてみればわかるとのことで、早速皮ごと食べてみましたが、これがとっても不思議な味がするのです。
なんというか、すごく甘いわけでなく、すっぱいわけでもなく、かといって味がないのではありません。とにかく、これ、りんごなの?と思うような、これまで食べたリンゴとはまったく違う味がします。ワインがそのワイナリーの土壌によってチーズやマッシュルームやチョコレートの香りを放つのと同じように、このリンゴは土のよい香りがするのです。
これはプロフェッショナル仕事の流儀でも紹介された、無農薬、無肥料で育てた木村秋則さんのリンゴでした。農薬をたくさん使わなければ害虫や病害で木が枯れてしまうのが当たり前のリンゴを、9年の気の遠くなるような試行錯誤の末、無農薬、無肥料で育てることに成功した奇跡のリンゴなのです。
このリンゴとともに、『「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録 奇跡のリンゴ』という本も貸していただきました。このリンゴ、絶対にこの本を読んでから食べるべきでした。だって食いしん坊のわれわれは、もうその奇跡のりんごを食べてしまって、お見せする写真もないのですから。
木村さんの農法は早く言えば虫も雑草も含めて自然の生態系を保つというものです。何か一種類の害虫(と人間が言っている)を農薬によって駆除すると他の害虫が増える。そうすると自然の生態系が狂ってくるから、仕方なく違う農薬を使うことになる。そうして、次々に農薬をたくさん使うことになってしまうわけです。また、肥料も与えずに育てると根がぐんぐん張っていって、必要な栄養素を自分で取りに行くようになるのですね。
それにしても、自然って不思議です。私は時々山小屋にいくのですが、毎年発生する虫が違います。ある年はおかまコオロギだったり、ある年はゲジゲジの大軍だったり、カメムシの時もありますし、ミツバチの時もありました。シロアリにはまいりましたが、それも、毎年続くわけではなく、翌年には違う虫になっているので私たちがお邪魔するときだけ、せっせと追い出しますが、特に農薬をばらまいたりはしません。どうせ、翌年には自然に数少なくなって、別の虫の天下になるのですから。 木村さんの農場でも同じような現象がみられるのだそうです。
この奇跡のリンゴ、切っておいても変色せず、そのまま置いておくと腐らずに香りよく小さく縮んでいくのだそうですよ。とてももったいなくて、そんな実験はできませんでしたが、そんな姿のりんごみてみたいものです。