広報は点描である、ということについて
2013.11.15
点描という絵画技法があります。スーラの絵で有名です。一つひとつの点を見ても、黒だったり赤だったり青だったりその中間色だったり。意味はほとんど見出せませんが、それらを集合としてみたとき、初めて目指す姿が浮かび上がってきます。それが広報活動のあり方とよく似ていると思えるのです。
昨日のプレスリリースも今日の記者発表も明日の取材も、それなりの意味はあっても、大きな広報目標から見ればカンバス上の一点に過ぎません。そのような点を日々着実にテンテンと打って行く作業を繰り返す。そして、ある時点で振り返えって見ると、目標とする一つの画が描かれている、それが一つの理想ではないか、というふうに…。
IRの分野にはうまい用語が存在します。「モザイク情報」がそれです。企業の業績や将来価値に大きな変動を与えるとは思えないような情報、適時開示規則上の軽微基準に該当するするような情報をそう呼ぶのです。ところが、そのような何気ない一片の情報を集めて分析すると、企業の実像やその方向性がモザイク絵のように浮かび上がってくるというわけです。
IRでは、企業側が意識的に画を描くというよりも、個別の事象や案件が発生するたびに発信されたランダムな情報から、アナリスト側が一つの画を見出すというニュアンスですが、広報活動としては、それを意識的にやってみてはどうか、と思うのです。それには、あらかじめ描くべき大きな目標をしっかりと立てておく必要があります。
たとえば研究開発に優れた企業であると認知してもらうことを広報の目標とする会社なら、研究開発に関する情報をどんどん発信し、取材を受けるようは活動を続ければ、数年後には目標の姿にかなり近づくことができるでしょう。
そんな簡単なこと…と思われるでしょうが、それがなかなか難しいのです。研究ネタが見つからないということもあるでしょうが、やっと見つけたネタでも、そんなつまらない情報をなぜ発表するのだ、という開発サイドからの反対に会うことも少なくないからです。
そんなときスーラを思い出してほしいのです。一つの情報はそれほどインパクトの強いものでなくても、それらの点が集まれば画が描けるのだということを。。〈kimi〉